蒼の王様、紅の盗賊
仕事を始めるは、祝宴が終わりその余韻で警備も緩むその時。
その時が来るまで俺達は、各々身を隠して待った。
自分達で言うのも何だが、俺達の仕事は盗賊としてはトップクラスだったと今考えてそう思う。
悪名高き俺達が非情な悪行を繰り返しながらも何の制裁も受けていないのは、入念な下準備と緻密な計画を元に犯行を行っていたからだ。
俺達は必ず仕事を成功させるために、ターゲットに決めた場所に必ず仲間を送り込み下調べをさせていた。
建物の構造や金目のもののある場所、そして人の動きと警備の盲点。
抜かり無い計画。
そしてあの時この城へと入る時も例外ではなくて、随分と前から仲間を城の内部に潜り込ませていた。
今回の相手は小国とはいえ城は城。
その警備は思っていた以上に厳しくて、なかなか機会を得られずに居た。
だが十分に調べが終わり、王女の祝い事という絶好のチャンス。
これを逃すわけにはいかないと、満を持しての犯行だった。
――――......。
俺は何処かの部屋の一室の衣装部屋に身を潜めた。
薄い壁を通して聞こえるのは、幸せそうな宴の音。
俺の大嫌いな、幸せの音。
その音にどうしようもなく苛立ちを覚え、俺は手に握った愛用の短剣で近くにあった煌びやかな衣装を腹癒せに切り裂く。
幸せというものが満ちた場所。
そんな場所ほどこの時の俺にとって居心地の悪い場所は無い。
早いとこ仕事に入り、金目の物をかっさらってやりたい。
この幸せに満ちた空間から全てを盗んでやり、何も無いどん底に幸せにふやけた奴等を突き落としてやりたい。
身を隠している間に思うのは、そんなことばかりだった。
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