蒼の王様、紅の盗賊
「お前はこの国の姫だろう?まだ子供とはいえ、一国の姫だろう?
俺達はこの城を襲った。お前の大切な者達を皆殺してやった。全て奪ってやった。
哀しい目だと?
むしろ俺は下らん奴等の死に様に今最高に清々しく楽しい気分だ!
なのに何故、今こうなっている理由でなくそのような下らないことを問う?
憎いだろう、殺したいだろう?俺のことが」
俺は自分の足にしがみつく彼女を冷たく見下ろして言った。
哀しい目。
彼女は俺を見てそう言ったけれど、俺自身は微塵もそんな意識は無かった。
哀しい目などしているはずはない。
自分は今こんなにも人の死に様が清々しくて、呆気なく自分の前で散っていく人の姿を思い出しゾクゾクして仕方ないのに。
それなのに、哀しい目など――――。
「........貴方、とても辛いのね。とても、哀しいのね。
私と......私とおんなじ。
私もね、今すごく.....辛くて、哀しいの」
俺の言葉が聞こえているのか、聞こえていないのか。
それは俺には分からなかったが、彼女は俺から視線を離さないままに言った。
「私に力があれば、哀しみなんて―――取り去って......あげられるのに。
みんな、笑顔で......居られるように、するのに。
そんな哀しい目.......させたり、しないのに........な」
「なっ......!」
どうして、こんなに真っ直ぐなのだろう。
どうして俺を見るその目に、憎しみが無いのだろう。
どうして―――こんな子供の言葉でこんなに、胸が締め付けられるのだろう。
彼女が発する声の掠れが一層に酷くなる。
俺を止めようと掴む手から、だんだんと力が抜けていく。
「............」
襲撃者である俺を前に恐れも恨みも憎しみも見せない彼女。
俺は気が付くと意識を手放す寸前の彼女の小さな身体を、そっと抱き上げていた。
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