蒼の王様、紅の盗賊
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老婆から薬を貰い、森の中の彼女の元へと戻って来た俺。

横たわる彼女。
俺は近付き彼女にまだ息があることを確認してホッとする。



早速俺は彼女に薬を飲ませてやる。

意識が無い彼女だが、口に入った薬が苦かったのかほんの少し顔を歪めた。
その生きている証の反応に、また俺の心は何処かホッとした。



薬を飲ませてやれば少し落ち着いたらしい。

まだ息は浅いが、苦しそうな息遣いでは無くなって静かになる。
俺はそんな彼女を撫でたり抱き寄せたりするわけでもなく、少し間隔を置いて腰を下ろした。















「............俺は、一体何をやってんだ」



事が一段落し、一つ息を吐き出した俺は今更ながらに呟く。

全ては自分の意志で行っている行動。
だがそのはずなのに俺の中には違和感があって、自分でも何が何だか分からない状態。


今まで生きてきた中で、一度も感じたことの無いような気持ちだった。





くそっ。
一体何なんだ、この感じは。
得体の知れないこの感じ.......実に胸糞悪い。

静けさが支配する森の中で一人心の中で悪態をつく。





この気持ちが何なのか分からない俺は、その異質な気持ちの正体が分からないことが凄く気持ち悪かった。
こんな気持ちを抱く自分が今までの自分ではない気がして、何だか気分が悪かった。


だが俺はこの気持ちの正体が分からないことに苛つきを覚えただけであって、この気持ち自体は嫌ではなかった。
むしろ、心地良ささえ覚えた。











「...........ん....」



と、一人そんなことを考えていると隣で眠る彼女が軽く唸る。

その唸りに俺は意識と視線をそんな彼女へと向けた。







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