蒼の王様、紅の盗賊
そのはずなのに。
そのはずなのに、俺はどうにも此処から立ち去る気にはなれなかった。
というよりも、そんな気にならなかった。
そんな自分の心に俺は可笑しさを覚えたが、隣から聞こえる小さな寝息に何だかもうどうでもよくなった。
彼女は、今生きている。
何だか小さな寝息にその事実を確認し、今までに無く満たされた気持ちになって薄く笑った。
真っ暗で月明かりしかない森の中。
俺はこの時、ひたすら歩いていた底辺の人生に一筋の光が差した気がした。
そして俺はその光へと、廃れ堕ちた俺の再生への光へと真っ直ぐ手を伸ばした。
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