蒼の王様、紅の盗賊
〜3〜





「────.....」



取り残された兵たちが三年前、この城で起こった忘れられない惨劇に浸っている頃。

此処にもう一人。
同じことを想う者が、静かに月を眺め佇んでいた。








『────父上ぇえっ!』



三年前のあの日。
血塗られた広間に見つけた父に、泣きじゃくりながら駆け寄った....あの少年が。






「........あれからもう三年が経つのか」



そんな月夜に佇むシュリは、懐かしむように呟く。



あの日。
血塗られた広間で、動かなくなった父の姿が目に焼き付けられたあの日。
彼は、シュリは心から笑うことが出来なくなった。


泣いても、名を呼んでも目を覚まさない父にシュリは、父の死という現実を知った。





シュリにとっての家族は、父だけ。
母はシュリを産んですぐ、病に倒れてこの世を去った。


だから母の顔を、シュリは知らない。
シュリの記憶の中の家族は....父、一人だけだった。

その唯一の家族の父が
ずっと一緒に居られると思っていた父が、覚悟も何もしないままいきなりシュリの前から消えてしまった。
その時の恐怖とはまた違った感覚が、全身を過ぎる。






『....父上っ!』



あの時、血塗られた広間に響いた自分の声が今のシュリの頭に響き渡る。
響く絶叫が、耳に纏わりつく。


 




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