蒼の王様、紅の盗賊
〜3〜






あれからもう、どのくらいの月日が経ったのだろう。

俺は小さな彼女を抱え彼女の小さな命を助けたあの夜以来、世界の中で最も醜悪なあの廃翼の盗賊団と言われたあの場所に再び戻ることは無かった。



自らが立ち上げ築き上げた最低最悪の集団。

唐突に俺が姿を消したことはきっと動揺を呼んだだろうが、きっと何の変化も起こらなかっただろう。


あの集団は一人一人がそれぞれに人の道のその底辺を行く者達で、そもそも誰かの元に大人しく付き従うような輩ではない。



俺があの集団で名目上はトップではあったが、それは利便性の上で誰かまとめる者が居た方が仕事がやりやすいというだけの理由。
俺に忠誠心なんて持ってる奴は、あの場所に一人も居はしなかった。

それが集団から離脱した俺にとって幸であったのか不幸であったのかは判らない。













「..........」



「ねぇ、クロア?」




あの日から時が経ち、彼女は随分と回復した。

あの時は命さえも危ぶんだが今ではすっかりその危機は去り、今彼女は俺の隣に座り俺を見上げていた。








「.........。
どうした、お前腹でも減ったのか?」



呼ばれる名に少し間を置いて答える。

目は合わせない。
それは敢えてでは無くて他人と話す時は大概目は合わせなかった。








「クロア、貴方誰かと話す時にはちゃんと目を見て話さなくちゃ駄目なのよ?」



「........」




「礼儀なんですもの。
貴方は私よりも大人なんだからちゃんとしなきゃ駄目よ」



「.........」








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