蒼の王様、紅の盗賊
「名前を呼んだ。
たかがそれだけのことだろう」
「あら、でも嬉しいものは嬉しいもの。
仕方が無いわ?」
「.........」
「そんなことよりもね、貴方に聞きたいことがあるのだけれど。
聞いてもいいかしら、クロア?」
正直この少女と話していると調子が狂う。
何と言えばいいのだろう?
このアスラと話していると、今まで溜めに溜め込んで吐き散らしてきたはずの毒がすっかり抜かれていくようなそんな感じなのである。
ほんの少し前までは盗みも殺しも平気で行う血も涙も無い冷酷非道な最低最悪な盗賊を束ねていたはずなのに。
........。
それと同じ人物とは思えない程の変わり様。
他人も大いに驚くだろうが、俺自身も驚いた。
「何だ?」
黙っていようとも思ったが、また色々と面倒な事を言われそうなので答える。
「あのね、聞きたいことっていうのはね――――えっと」
「早く言え、面倒だ。
お前は回りくどく物事を言う性格でも無いだろう?」
今の今まであれだけ何の遠慮も無しに言葉を続けていた少女が何故か口籠もった。
あまり遠慮無しにズバズバ言われるのも良くは無いが、何だか彼女が口籠もるのは珍しさもあって逆に気味が悪く思えて俺はぶっきらぼうに言葉を促した。
「........。
あのね、私はこのまま貴方に付いて行っても良いのかしら?」
「.........」
――――。
いきなり何を言い出すのだ。
そう思った。
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