蒼の王様、紅の盗賊
罪の意識があった。
贖罪の意思があった。
でもそれより何より彼女の事がもう他人とは思えなくなっていた。
愛おしい。
そんな表現をするのはむず痒いけれど、それに似た感情。
まるで親が子を慈しむようなそんな感情。
自分の中で彼女の存在はもう生きていくために欠かせない存在になっていた。
「........お前を捨て置く気は無い」
彼女の瞳が驚いたように見開いた。
その数拍後、彼女の顔に満面の笑みが咲いた。
「本当?本当に本当ね?」
「五月蝿い、何度も聞くな。
無駄な嘘はつかない。........本当だ」
.........。
ッ。
「.........おい、何故泣く?」
俺の言葉のまた数拍後、今度は笑顔から泣き顔に変わった彼女。
くるくるとよく表情の変わる娘だと思った。
「.......だって嬉しくて。
本当の本当に嬉しい時、人は自然と涙が出るものよ?
ありがとう、クロア」
「ッ」
ありがとう。
そんな言葉を向けられるだなんて思ってもみなかった。
ありがとうなんてそんな言葉を向けられる程の真っ当な人間ではないのは自分が一番良く分かっている。
それだけに思わず言葉が詰まった。
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