蒼の王様、紅の盗賊









「我等が国は奴等の手に堕ちるような国であるとは思えませぬが、油断は出来ません。

早急に手を打たねばこの国に膨大な悪共が蔓延ることに。
シュリ様、貴方が憎しんで止まぬ悪にこの国が侵されることになるのです」



「この、国が.....」




ドクンッ。
レストの言葉が谺し、心臓が大きく脈打つ。



ッ。
そしてシュリの中に冴え返るは忌まわしき闇の過去。
幼き頃に焼き付けられた記憶が再び熱を帯び、鮮明に甦る。





(.......止めろ.....止めろ!)



抑えようとしたが抑えられない。
身体が細かく震える。

.......。
あからさまに表に出すことは王という立場の手前どうにか押し込めた。








「............そんなことはさせない」



シュリは震える身体を抑えそう一言絞り出す。






「.......さすがは聡明なる我等が王。
私は貴方の味方で御座います。

......貴方の正義、私が全力でお助けを。
御安心を。シュリ様は我等を正義の駒として動かして下さるだけで良いのです。
必ずや良い働きをしてみせましょう」



「レスト―――」



レストは言葉と共に俯き跪く。
忠実なる臣下の鏡のような臣下の姿。

このレストという男は仕事も良くこなし皆からの信頼も厚い。
参謀としての役割も十分に果たし、この男が携わるのは国の中枢部分にも及ぶ。

この国の二番手。
今のこの国が成り立っているのはこの男の働きが大きく、実質上王座に就くシュリを越えて一番手であるのかもしれない。






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