蒼の王様、紅の盗賊
頼りになる男だった。
事実、これまで城に閉じ籠りきりだったシュリはレストに頼りきりだった。
シュリもこの国も、この男に依存していた。
「御安心を。
私めがこの国とシュリ様を御守り致しましょう」
ッ。
「?シュリ様、如何なされましたか?」
「.........このままお前に頼ってばかりでは.....駄目だ」
「っ!」
今までのシュリであればレストの言葉をそのままに受け入れていたはずだった。
悪をずっと誰よりも憎んでいた。
だが彼はずっと怯えそして拒んできた。
面と向かって悪と向き会うことに―――あの過去と向き合うことに。
彼は向き合うふりをしていつも背中を向けていた。
「......今のままでは駄目だ。
この国の王としてそして悪を憎む一人の人間として、俺はちゃんと向き合わねばならない」
ッ。
一瞬跪くレストの灰色の頭が微動する。
俯いているために表情は判らない。
普段でさえ何を考えているか判らない男であるのに表情も見えなくなってしまえば一層に判らない。
自分の主であるシュリのこの変化をこの男はどう感じているのだろう。
驚愕か?それとも喜ばしいのか?
先程見せた一瞬の微動が物語る感情は本人にしか判らない。
「お前には迷惑ばかり掛ける。
だが頼む、この国の正義のため私と共に尽力して欲しい」
......。
「御意。
それではもう一つシュリ様のお耳に入れておきたいことが。
奴等―――鳳翼の盗賊団に関する情報に御座います」
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