蒼の王様、紅の盗賊







「今がその一歩を踏み出すその機か.......」



決意を固めた。









........。

ッ。




シュリはそう一言誰も居ない空間に溢すとフッと静かに瞳を閉じた。



それから徐に懐に手を掛ける。
懐の奥で何かを探る。

ッ。
すると指先に何か固いものが触れて、彼はそれを握る。
それが何かは懐の中で判らないがそれを握り締める彼はそれが何かは知っている。

スッと握り締めたそれを懐の奥から取り出す。






ッ。キィインッ。

.......ザッ。






懐から取り出されたそれが何かを確認する間も与えずに、シュリは目を閉じたままそれを勢いよく引き抜き自らの長く美しい銀色の髪の上を走らせた。


甲高い金属音。
何かを裂くような鈍い音。

.........。
そして空間に舞うように散る銀色。
ハラハラと舞うその銀色を映して彼が手に握り締めるそれは―――短剣は静かに煌めいた。










「この国は........私が、俺が守る」



暫し空間を漂った銀色が収まって、静寂に包まれる中でシュリの声が響いた。

そしてようやく開かれる瞳。


美しく哀しげな蒼色。彼の色。
だがその中に一筋、先程閉ざされる前には無かった強く真っ直ぐな決意の光。






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