蒼の王様、紅の盗賊
「───あぁ、分かった分かった。だからもう叫ぶな!耳が痛い。
じゃあ、バルト....お前もちゃんと支度しとけ」
頬を膨らまし、明らかな不満の色を見せるバルトに慣れたようにクロアは、また軽くあしらった。
「おっちゃん。何か俺の時だけいつも適当じゃねぇか!?ひでぇ....」
手を胸に当て、わざとらしく傷付いたような手振りでクロアを見返すバルト。
だがクロアに呆気なく視線を逸らされ、つまらなそうに、ムッとした表情になった。
「────あ」
少しいじけた顔で、無造作に一つにまとめた長い髪を指先で弄るバルト。
だがハッと思い出したように、バルトは目を見開く。
「そうだ、おっちゃん。
そういえばアスラはどうするんだよ?
姿が見えないぜ?」
バルトは気が付いた。
今、この場に居るのは凰翼の盗賊団。
その中でも盗賊団を指揮し統括する云わばトップ。
団長、クロア。
レイアに、そして自分。そしてもう一人。
「───あぁ、アスラか。
アスラなら、我々より先に現地に向かって任務を遂行している。
明後日の夕刻、街のはずれで合流するつもりだ」
そう。
この凰翼の盗賊団には、もう一人欠かすことの出来ない人物が居た。