蒼の王様、紅の盗賊
 
 
 
 
 
 
子供たちが去っていたはずの方を見て呟くアスラ。

ポツリと零れたその言葉。
普通なら、そのまま空気に溶けて消えてしまうようなその言葉。

だがそんなアスラの呟きとその横顔に隣に居たジルの心に激しく突き刺さる。







「────アスラ.....」



「ん?何だい?」



「.....アスラ。
お前は後悔はしていないのかい?
この道を───盗賊という道を選んだことに」





ジルはアスラの呟きと浮かぶ哀しい笑顔に軽く目を逸らして問いた。

そのジルの言葉に、独り言のつもりで呟いたアスラは驚いたように見る。






「聞こえてたのか、ジル。
.....後悔なんて───そんなものしてないさ。
今の私にそんなのしてる暇なんてない」



思わず溢してしまった呟きに込められた想いを
無理矢理にかき消すように、ジルに悪戯っぽい笑いを向ける。

だがその笑みもやはり何処か哀しくて、本当のアスラの気持ちは隠しきれはしない。 






「────そうか.....すまないな、余計なことを聞いてしまった」



アスラの笑みに隠れるそんな哀しみの意にジルは込み上げる感情を抑え込めて、あえてその哀しみの色に気付かないふりをした。






 
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