蒼の王様、紅の盗賊
上機嫌になった男は、アスラに自慢の商品を楽しそうに見せる。
.....これが、アスラの策略だとは知らずに。
そして暫くすると
林檎や葡萄。色とりどりの果物が、アスラの前へと並べられる。
どうやらここは、果物を扱う店。
此処が、今日のアスラの最初のターゲットとなった。
「へぇ....いろんなもんがあるねぇ。
実は私は、この国に来たのは今日が初めてでね。色々物珍しいんだ」
アスラは上機嫌の男に、真っ赤な嘘を並べる。
「おぉ、そうなのか!!」
だが、男はそんな嘘に気が付くはずもなく
上機嫌に答える。
「そうなんだ。
だから、もっと色々見せてもらえると嬉しいんだが」
「おぉ、任しときな!!
お客さんはいい人そうだから、特別だ!!」
男は、笑いながらそう言うと『ちょっと待ってくれ』と言って
また何かごそごそと取出し始める。
男は鼻歌を歌い、かなりの上機嫌で楽しそうに何かをアスラに話ながら
商品を次々と取り出す。
────今が、好機だ。
男が完全にアスラを油断し、僅かにあった警戒心が解かれてきた
その瞬間を見極めたアスラは、素早く懐に潜ませた袋の中に
目の前に積まれた商品を詰め込む。
もちろん、ばれない程度の絶妙なバランスで。