蒼の王様、紅の盗賊
彼等は何かを追っている。
だがその何かがなかなか捕まらないようである。
男達は暑苦しく息を切らせながら、総力を上げて捜しに捜し街を走り回っていた。
「────。
ふん、滑稽だ」
そんな彼等の様子を見る路地裏にうごめく紅い瞳の者。
ッ。男達の必死な様子にまた薄く笑いを浮かべた。
――――。
そう。
彼等が追っているのは、この紅い瞳の者。
その人だった。
ッ。
だが追われてる身にしては焦りは無い。
寧ろこの状況を楽しんでいるかのようであり、微かに浮かぶ笑みには必死に自分を捜す彼等に対しての嘲け馬鹿にするような感情が見えた。
冷笑。冷たい笑み。
月夜に煌めく紅い瞳に、ぴったりの言葉だった。
「.........。
本当に無能な奴等。
いい加減無駄だと言うのが判らないのかな?
―――さぁ。
あいつらなんて放っておいて、そろそろ引き上げようか」
フードを被った紅い瞳のその人は遠ざかる足音に背を向けるとグッと一回伸びをする。
ッ。それから鼻歌混じりに今にもスキップしそうな様子で、闇で黒く染まる道を歩き始める。
........。
追われている身であるはずなのに、当の本人であるこの者はまるで優雅な散歩気分。
本当に何だか必死にこの者を探す男達が馬鹿らしく滑稽に見えてくる。
――――。
夜の闇に消える紅。
纏っている外套が歩くと共に起こる風に翻り堂々と歩くその様は、勝者以外の何者でもなかった。
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