蒼の王様、紅の盗賊
「────....それでな、お客さん。この国は平和ってわけさ」
アスラのそんな行動なんて露知らず、一通り国の自慢話を話した男は
満足そうにアスラを見た。
「───そうか。とても興味深い話だった、ありがとう。
....じゃあ、これを一つ頂くよ?」
アスラは、男の動きを察知して素早く反応し
あたかも今まで話を聞いていたような返事をすると、目の前の林檎を一つ手に取り
男へと差し出した。
「はい、毎度!!!
って....お客さん、話聞いてくれて何か気分がいいからサービスだ!!
持ってけ泥棒♪」
話を満足なだけ話して、更に機嫌が良くなった男は
林檎を受け取ると、ニヤリと笑って言う。
(....あの、本当の泥棒なんですけど)
アスラは男の言葉に、心の中で苦笑しつつ
ニコッと笑う。
「悪いね、お兄さん。ありがとう!!」
「またまたぁ、お客さんは本当に煽てるのが上手いぜ!!
じゃあ、今後もご贔屓にな♪」
「あぁ、また話を聞かせてくれ」
アスラは、そう言葉を交すと男を軽く一瞥し
マントを翻した。
横目で男を見れば、何も知らずにこちらに手を振っている。
アスラは、そんな男に気付かれないように憐れみの視線を送ると
そのまま人の波へと溶け込み、歩き出す。