蒼の王様、紅の盗賊
懐に、重みを帯びた袋を抱えて。
(────しかし....あれだけ何の警戒心もないと
さすがに悪い気がしてくる)
一つの仕事を終え、人の波に身をまかせながら歩くアスラは
もう見えなくなった、今日の最初の犠牲者に多少の罪悪感を覚えた。
「────.....さぁ、次に向かうか」
だが、アスラは盗賊。
そんなこといちいち気にしていたら、やってはいられない。
割り切らなければ、盗賊なんてやってられないのだ。
アスラは、微かに抱いた罪悪感を心の奥にしまい込み
次の獲物を探すべく、辺りを物色する。
「────泥棒だーッッ!!!」
と、アスラが次の獲物を見付けて足を前に運ぼうとした瞬間
後ろの少し離れたところから、けたたましい程の叫びが。
しかもその声の主は.....さっきの店主の男の声。
泥棒。
その言葉にアスラに緊張が走る。
(────まさか....ばれたか!!?)
そう思いアスラは、身構える。
覚悟は出来ていた。
この盗賊という道を歩み始めたその時から
覚悟など、とっくに決まっていた.....。
アスラは、来るであろう衝撃を
緊張と共に待った。
────だが
その衝撃は来なかった。それどころか、周りに在った人の気配が.....遠ざかる。