蒼の王様、紅の盗賊
 
 
 
 
 
 
「────....」



だが、だがしかしその踏み出された足が二歩目を踏み出すことはなかった。








────それは何故か?


理由は一つ。

人集りから遠ざかろうとしたアスラの耳に
絶対に聞こえるはずのない、あるものが聞こえたから。







(───何で...何故だ!?)



アスラは一度は背を向けた人集りに向かって、一心不乱に走りだす。





さっき頭の中を過った自分の危機なんて関係ない。


今はもう───
人集りの中心から聞こえてきたものにしか意識が行かなかった。






人込みを掻き分け、擦り抜け

人集りの真ん中。騒ぎの元凶へと急ぐ。





(どうか....どうか聞き間違いであってくれ!!)




人を一人、また一人と抜かしてアスラは遂に

人集りを.....抜けた。








「.....何故...だ」



人集りを抜けた先。

騒ぎ立てる人を抜けた先。



そこでアスラを待っていたのは

───決して認めたくはない....現実だった。





 
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