蒼の王様、紅の盗賊
子供たちはいつもと様子が違うアスラに戸惑いながら、詰まりながらも答える。
ささやくように話すアスラと泣き枯れて弱々しい声の子供たち。
その会話は周りには聞こえてはいないようで
観衆からは何を話しているんだ?という疑問の声が上がっている。
「....それでね、アスラお仕事だって言ってたのにとっても楽しそうにお話してたから。
僕らもアスラの真似をしてお話しようとしたの」
「だけど、あのおじさん.....僕らがアスラの真似をしてお話したらね、いきなり怒ったの。
泥棒って.....」
子供たちの言うアスラの真似。
それはきっと話で気を誘いその間に───。
そう。
子供たちは、見ていたのだ。
アスラの.....仕事を。
「........、そうか」
アスラは一生懸命話す子供たちにそのことを察すると唇を噛み締め、短く答えた。
「────。
お前たち、よく聞くんだ。
私が今からあのおじさんの機嫌を治してあげる。
だからお前たちは今から誰に何を聞かれてもハイと答えるんだ。
いい?出来るね?」
アスラは後悔した。
色々なことに後悔をした。
子供たちとあまり遊んであげなかったこと。
子供たちが自分の後を追い掛けてきていたことに、気付かなかったこと。
ッ。
そして何より"盗む"ということは、悪いことだとちゃんと教えてあげなかったことに。
全ての真実を、自分のしていることを説明し君達は決してしてはいけないと諭さなかったことに。
アスラは猛烈に後悔した。