蒼の王様、紅の盗賊
誰も巻き込みたくはなかった。
自分自身の犯す罪に。
悪いことだと、アスラの中で分かっていたから。
盗むという行為は、誰かを傷付けることだって....分かっていたから。
でも生きるために、どうしてもやらなければいけない。
悪いことだと、危険なことだと分かっていても
アスラは、やらなければならない理由があったから。
だけど、この子供たちは違う。
まだ世界の汚れを知るには、あまりに早すぎる。
この子たちには、いつまでも....心から笑っていて欲しい。
それなのに、自分自身の不注意で子供たちを巻き込んでしまった。
アスラは....悔やんだ。
(....でも、今は悔やんでいても仕方ない)
そう。
後悔したってもう遅い。
今は、無意味な後悔よりも....意味のある前進が必要だ。
アスラは、そう決心してその場から立ち上がった。
「お客さん、話は済んだかい?」
立ち上がったアスラに、男は話し掛ける。
その言葉にアスラは頷く。そして意を決したように口を開いた。
「───お兄さん。この子たちを帰してやってはくれないかい?」
「.....え、お客さん....あんた何を言ってんだい?」
男は唐突で且つ予想外なそのアスラの言葉に
驚いたように声を上げる。