蒼の王様、紅の盗賊
アスラのその言葉に、驚いたのは男だけではなかったらしい。
周りにいた観衆が、アスラの言葉に大きくどよめく。
「だから、言葉の通りだ。この子たちを帰してやって欲しい。
────この子たちに....罪はない」
アスラは、どよめき戸惑う者たちにもう一度
さっきよりもはっきりと言う。
「な....何言ってんだ!?
このガキどもは泥棒だぞ!!なのにあんた、こいつらに罪はねぇっていうのか!?」
暫くして、ようやくアスラの言葉の意味を理解した男は
驚きの表情から、怒りへと一変させて顔を真っ赤にする。
そしてその勢いで、男はアスラに掴み掛かる。
「あぁ、そうだ。この子たちに.....罪はない」
胸ぐらを捕まれ、今にも宙に浮きそうなアスラの身体。
だが、アスラはそんな状況にも関わらず冷静な声で答える。
だが、その声は少しだけ苦しそうに聞こえた。
「.....私があの子たちに、盗めと脅した。
あの子たちは、その私の言葉に従っただけさ。だから....悪くない」
「何だと!?嘘付くんじゃねぇ!?」
「嘘じゃないさ。疑うなら子供たちに聞いてみろ。
『こいつに脅されてやったのか?』とな」
アスラは、そう軽く笑いを含ませた声で言う。
その口調が、何だか挑発しているようで男の顔が
より一層怒りで赤くなった。