蒼の王様、紅の盗賊
「おい、ガキども!!そうなのか!?正直に答えろ!!!」
男は、子供たちを睨み付けると怒鳴るような声を投げ掛ける。
その声と形相に、ビクッと肩を震わせて....子供たちは、縋るようにアスラを見た。
その視線に気が付き、アスラは口元を動かす。
『言え』
子供たちが向けた視線の先で、アスラは声には出さずに答えた。
「────はい」
子供たちは、震える声で答えた。
アスラの言うとおり「はい」という肯定の言葉を、子供たちは男へ返した。
その返事に、男は驚いたようにアスラに視線を戻す。
「ほらな....あの子供達は関係ない。
からかってやっただけさ。
あんたがあんまり間抜けなもんでね、私がこれだけ盗んでも気付きゃしなかったんだからね?
まぁ、さすがに素人の子供のことには気が付いたか」
再び戻された視線に、アスラはまた冷静に言いそして笑う。
そして徐に懐から先程盗んだ物が詰まった袋を取り出し、男の目の前で逆さにしてみせる。
林檎やら檸檬やら沢山の果物がバラバラ落ち、周りが一気にざわついた。
「なっ!?
てめぇ、なんて奴だっ!
.......おい、ガキ達すまなかったな。お前等は帰ってもいい」
アスラの行動に男は唖然とし、それから真っ赤になる。
グラグラと男の中に怒りが込み上げる。
「..........」
その様子にさらに怯える子供達の姿。
男はそれにハッとして、怒りを抑えて子供達に言う。
「さぁ、早くお家に帰んな。
恐がらせて悪かったな。
詫びに、その林檎はやる」
男のいきなりの態度の変わりように、戸惑う子供達。
そして、男に早く帰れと急かされて困ったようにアスラを見た。
(───早く、行きな)
アスラは心の中でそう言い、小さく縦に頷いてみせた。
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