蒼の王様、紅の盗賊
きっと城の外には
もっと....もっとたくさん哀しいことが、苦しいことが溢れてる。
城の中に居れば、そんな哀しいことには出会わない。
この城が、守ってくれる。
まだ幼かったシュリは、哀しみから逃げるため
城に引きこもり、自分の殻に閉じこもるようになっていった。
あれから三年。
シュリは一歩も城の中から出てはいない。
出るとしたら、城の真ん中にある中庭くらい。
その他の場所へは、この三年踏み入れたことはなかった。
「───....」
シュリは、自分から出た言葉に驚いて
そしてその後、口を閉ざした。
「懐かしい」
そんな言葉が出るなんて、まるで自分が外へと出たいみたいだ。
そう思ったから、シュリは思わず口を閉ざしたのだ。
(───何を言っているんだ....俺は。
外なんて薄汚い悪が蔓延る場所だ!!そんな場所を僅かでも求めるだなんて....俺は!!)
そう。
シュリの中では、まだ城の外は恐ろしくて哀しい場所。
僅かに芽生える城の外への希望も、シュリの中にあるそんな先入観が
すぐに掻き消してしまう。
今だけではなく、この三年という月日の中で幾度となく城の外へと出たいという衝動に駆られた。
だが、それでも長い間城を出ることがなかったのは
いつも先に、恐怖という概念があったからだった。