蒼の王様、紅の盗賊
 
 
 
 
 


........。 
自分でも何故だか判らなかった。

相手はただの罪人。
興味の対象になるはずなどなかった。

だが予想外の反応を示し続けるアスラに唐突に興味をそそられた。



出た言葉は無意識。
二人の間に沈黙が走った。





「......」



その問いにアスラは多少躊躇う。
アスラもこの悪を嫌うことで有名な王が罪人である自分に名を聞くとは思っていなかった。

―――。
だがこの状況で答えない理由も見つからなくて少し間を置いて答えた。








「───、アスラだ」




自らの名を名乗る。
この蒼の王様の前で。

そしてアスラが名乗るのを聞き届けて、シュリは口を開いた。








「アスラか。
私の....いや、俺の名はシュリ」



シュリは一人称を固い王様としての自分から普段のシュリとしてのものへと変える。

普段、臣下にも....ましてや国民にもあまり見せることのない素の自分。
シュリはそれを罪人であるアスラの前へと出す。

故意に出したのではなく、何だか自然の流れで出ていた。









「.....」



皆から恐れられる蒼の王様ともあろう者が、自分を前に名を名乗っている。

そんな奇妙な状況を前に驚きの色を見せるアスラにシュリはフッと笑った。








「礼儀を知らない奴なら、王としての俺じゃなくともいいだろう?
....固いのは俺もあまり好きではない」



シュリは続ける。






「お前に興味が湧いた。
どうせ死に行くだけの身。
何を話したところで惜しくはないだろう?

少し、話を聞かせてもらう」




ッ。

シュリはそう言い薄く笑うと徐にその場へと座り込んだ。






「さぁ話をしようじゃないか、悪人さん?」



座り込み不敵に笑うシュリ。
戸惑いを隠せないアスラ。

この薄暗い牢獄の中で王様と盗賊の....奇妙な談話が始まった。






 
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