蒼の王様、紅の盗賊
〜3〜 




アスラがちょうど、牢から抜け出すその方法を考えているその頃。
アスラの元に一人の男の影が近付いていた。





────カツッ...カツッ。



地下牢へと続く薄暗い階段。

まだ昼間だというのに太陽の光を知らない地下は薄暗く、気味の悪いほどひっそりしている。


そんな太陽の届かない薄暗い場所へと続く階段をシュリは....この城の主は一人静かに下りていた。




「───相変わらず、此処は気味が悪いな」



目的の者の居る地下牢へ歩を進めるシュリは、思わずそう呟いた。


この国の王様であるシュリが、こんな薄暗く気味の悪い所に居る理由。行く目的。

それは、この地下牢に居る一人の盗賊。
紅い瞳の、今この国を騒がせている盗賊に会うため。



会いに行くと言っても、気持ちを改めさせるとか理由を聞くだとか、そんなことをするつもりはシュリには更々ない。

ただシュリが一番憎む、悪の道を歩む者に軽蔑と絶望を。
そして、悪がまた一つ抹消させることの喜びを確かめるためだった。







「───まぁ、薄汚い悪党どもにとっては....此処がお似合いか」




シュリは階段を一段ずつゆっくり下りながら、これから自分に助けを....命を乞うだろう無様な者の姿を思い描きフッと口元を綻ばせた。




 


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