蒼の王様、紅の盗賊
 
 
 
 
 
 
薄汚れた服を纏い、両手は後ろで縛られている。

ワインを零したような綺麗な紅色の髪は肩を少し越えたくらいの長さ。
無造作に跳ねた髪が、逆に空気を含ませフワッとした印象を醸している。






(────あれ....こいつ何処かで)



一通り牢の中の女を見回した後、シュリは不意にそう思った。

何故かは分からない。




一国の王であるシュリと盗賊である牢の中の女が、今まで何処かで出会うなんてことは考えづらい。
それにここ数年シュリは城の外に出ることもなかったのだから、最近噂となっている紅の盗賊とやらに出会うことなどはないはずである。



そのはずなのに、牢の中に捕らえられた罪人である....シュリの最も嫌う悪であるはずの彼女に
どうしても覚えがあるように思えてならない。
親近感。
それに似た感覚が沸く。





(────。
まぁ、気のせいだろう。こんな盗賊と俺が交わるわけがない) 



シュリは唐突に浮かんだそんな懐古とも取れる覚えのない感情を、頭の中で冷静に見直し否定するように何処かへと追いやる。





(.....あの女は盗賊だ。
この国から───世界から排除すべき人間だ)



悪は、たとえ相手が誰であろうと悪。
その事実は変わらない。
そんなことに気が付いて、一度だけ和らぎ掛けた瞳に再び冷酷な蒼い光が灯る。






(───この女も、もうすぐこの世界から居なくなる。
これでまた....悪が死ぬ)



シュリの冷たい瞳が、再びアスラを捕らえた。





 

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