蒼の王様、紅の盗賊
────スッ。
牢の中の女。
今まで閉じ切っていた彼女の瞳が、シュリの気配を捉えたのか静かに開かれた。
そしてシュリの蒼い瞳はゆっくりと開かれた牢の中の彼女の紅い瞳をその冷酷な光の中に映し出す。
紅と蒼。
対なる2つの色が、交わる。
「────お前が、最近この国を荒らしている盗賊か」
視線がぶつかり両者の間を走った沈黙にシュリは静かに口を開いた。
「────あんた....誰だ?」
シュリの言葉に牢の中の女は言う。
ッ。
彼女の燃えるような紅い瞳が刺すような視線でシュリを見る。
(.....この女、俺を恐れていないのか?)
シュリは内心微かに驚いた。
大抵この牢へ入れられた罪人たちは命乞いをする。
シュリを前にし、涙を流しそしてその冷酷さを前に恐れおののく。
だが今、目の前に居る彼女はどうだろう?
こちらを見据えて、様子を伺うように睨んでいる。
不思議な女だな、そうシュリは思った。
「.....世間知らずな悪党だな。
俺を───この国の王である私を知らないとはな」
シュリは心の何処かでそんなことを思いつつ、瞳に込めた殺気はそのままで、牢の中の彼女に向かって口を開いた。
王である自分の肩書きをまるで誇示するかのような口調で彼女を見る。
「────王....あんたが?」
王。
そのシュリの言葉に牢の中の彼女は驚いたように目を細めシュリの思惑通り綺麗な紅色の瞳を見開いてシュリを見た。