蒼の王様、紅の盗賊
信じられない、そんな感じだ。
シュリは、そんな彼女の様子を蒼い瞳に映し
口元に嘲るような笑みを浮かべて口を開いた。
「.....お前は、身分の違いを知った今でも礼儀というものを知らないのか?
一国の王を前にして、怖気づきでもしたか」
嘲るような、軽蔑し見下すような笑みが言葉と共に牢の中の彼女に注がれる。
そんなシュリの表情に、牢の中の彼女は気を悪くしたのだろう。
少しムッとしたような声が返ってくる。
「私は盗賊なんでね。悪いがあんたに忠誠なんか誓っちゃいない。
だからあんたが王だろうが、礼儀を気にする義務はない」
────やっぱり、この女は今までの奴等とは違う。
シュリは、改めてそう思った。
(....変な奴だな)
紅い瞳に宿る強さを纏う光が、シュリを掴んで離さない。
睨むような形ではあったが、シュリは彼女に釘付けになっていた。
「口だけは達者なようだな」
「私は、あんたらみたいなお堅い人間とは違うんだ。
このくらい達者じゃなけりゃ、やっていけないのさ」
ああ言えば、こう言う。
実際、二人の間には絶対的な立場の差があるはずなのに、その会話には、全くそれが感じ取れなくなっていた。
いつもなら、ずっと冷静を保ち感情を面に出さないシュリだが、何だかこの牢の中にいる彼女の
普通ではない態度に、シュリは少しだけバツが悪くてムッとする。