蒼の王様、紅の盗賊
 
 
 
 
 
 
 
こんな感情、久しぶりだ。

そんなことを思っていたら.....それが知らない間に、表に出てしまったらしい。





「.....見たところ、お前は女のようだが気品の欠片すらないようだな。

さすがは薄汚い盗賊だな」




気付いた時には、牢の中の彼女に向かって
そんな挑発的な言葉を言っていた。



言ってしまってからハッとするが、もう遅い。

こんな罪人を前に取り乱すなんて自分もまだまだ子供だな、と心の中で苦笑する。









「フンッ、大きなお世話。
.......私は女なんてもの、とっくに捨ててるんでね。
あんたに言われなくとも、それくらい知っている。

だいたいあんたみたいなのに女として見られたって全然嬉しくないわ」




そんなシュリの子供染みた挑発的な口調に彼女は一瞬シュリを睨む瞳を細めて、それから少しだけまたさっきより鋭くなった視線を向けた。







(───女を捨てている....か。確かに、そのようだな)



果敢にもこちらを睨み続ける彼女を改めて見る。
その格好や素振りそして彼女の言葉に納得した。

.........。
だが納得するとともに疑問も浮かぶ。









(.....だが何故だ?)




何故だ。
何故、彼女は女を捨ててまで盗賊という汚れた道で生きるのだろうか?

こんな汚れた道しか彼女は選べなかったのか?


目の前の牢の中に居る彼女は、シュリの最も嫌いなもの。

普段なら冷たい負の感情以外には何も浮かんで来ないはずなのに、シュリの頭にそんな想いが自然と何処からか浮かんできた。







(───....俺は何を考えてるんだ。
こんな汚れた薄汚い盗賊のことなどを、何故)






 
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