蒼の王様、紅の盗賊
誰からとも分からない呟きに、ジルは答える。
目の前には、アスラの置いていった食べ物に集る子供たちの姿。
ジルは、その姿に思わず笑みと共に溜め息が零れた。
「────だがな、私は時々....哀れに思ってしまう」
ジルは、落ちた溜め息と子供たちの姿に目を逸らした。
そんなジルの様子には気付かずに子供たちは、だだ無邪気に喜びに顔を綻ばせる。
汚れを知らない、純粋な子供たちに....ジルはどうしても目を合わせて居られなくなった。
「───盗んだものでしか、命を養っていけない....この子供たちが。
何も知らずに、ただ生きる子供たちが」
ジルは逸らした瞳を地面に向けて、自分の足元を見る。
「それに......我々のため、自らを無にしてまで盗みを続けるアスラが。
────哀れで、仕方がない」
ジルは、そこまで口に出すと込み上げてきた感情に耐えられなくなって、そこで目を閉じた。
そう。
今、子供たちが嬉しそうに.....何も知らずに集る食べ物や服。
それは全てアスラが街から盗んできたもの。
「アスラはまだ若い。
普通なら盗賊なんて物騒なこと.....やらせたくはないのだが」