蒼の王様、紅の盗賊
「お前よくも....ってあれ?」
見上げた。
だがしかし、そこには何もなかった。
あるはずの馬の顔は見当たらず、ただ青い空が男の瞳に映る。
「一体、どういう───」
男は不思議に思い、体を擦りながら立ち上がり
馬を探すべく辺りを見回す。
だがやはり誰も────
「あ....居た」
誰も、いや何も居ないと思い掛けたその時
男の目に、ついさっきまで自分を乗せていたはずの馬の姿が映った。
それは....
小さな、もう見えなくなりそうなほど遥か彼方の馬の姿だった。
「アァーーッ!!
馬!馬が逃げやがった!!」
男は、そのことに気が付き大声で叫ぶ。
だが、時すでに遅し。
馬はもう見えないほどに遥か彼方に走り去ってしまっていた。
彼の声だけが虚しく、真っ直ぐに続く道の先へと響く。
「くそッ!
あの馬、今度会ったら馬刺にしてやるからな!」
男は、もう完全に見えなくなった馬に
そんな物騒なことを叫び、悔しさのあまりに地面を蹴る。
だがその蹴りだした足は、硬い地面を思い切り蹴り
ただ自分の足が痛くなっただけだった。
「もう、何なんだよ!」
時間を間違え
馬に落とされ、更には逃げられ
踏んだり蹴ったりの男は、ハァと疲れたように溜め息をつく。