蒼の王様、紅の盗賊
「ここからは
....歩くしかねぇか」
此処から、男の本当の目的地まで結構距離がある。
馬で掛ければ一時間程度だが、今の彼には肝心の馬は居ない。
徒歩だと....着くのは夕刻ぐらいだろうか。
男は、その長い道程に
もう一つ溜め息をついた。
その溜め息の拍子に、男の被っていた砂色の外套のフードが
ハラリと落ちる。
フードの下から現れたのは、後ろで無造作に結った紅がかった茶色の長い髪に
琥珀色に煌めく、少しだけ釣り上がった瞳。
「───アスラとの久々の再会だしな。
....頑張りますか!」
砂色の外套の男、バルトはそう独り言を呟くと
グッと伸びをした。
「────あ!」
だがバルトは、今の自分の妙な身軽さに気が付いて
そのまま動きを止める。
身軽だ。
此処まで遠出をしてきたのに、あれだけ荷物があったはずなのに
どうして、自分はこんなに身軽なんだ?
バルトは、そんな違和感に首を傾げた。
そして暫く考え込む。
「......あーッ!馬!!!」
そうだった。忘れていた。
バルトの荷物は全て....もう遥か彼方に見えなくなった馬の背中に括り付けてあることを。
もちろんその荷物の中には、お金も着替えも....楽しみにしていたおやつのお菓子も入っている。