隣のマキオ
25歳から5年間。

陶子は、生活のすべてを悟に捧げたといってもいいくらい愛していた。

悟は、以前勤めていた会社の先輩で、陶子に仕事から社会人としてのあり方、そして大人の恋愛を教えてくれた。

悟のために料理学校に通ったり、エステに行ったりもした。

そのなにもかもが3週間前になかったことにされてしまったのだ。

突然、夜中に呼びだされ、親の目を盗んで、陶子はそっと家を出た。

家の近所の公園で、神妙な顔付きの悟が手招きをしている。

こんな時間になんで?

数分の間に陶子は、色々なことを考えた。

もしかしてプロポーズ?

それとも、転勤になった、とか?

会社辞めるとか?

陶子が近づくと悟は、いきなり「ごめん!」と頭を下げた。
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