隣のマキオ
マキオの事情。
二人でコンビニの袋をぶら下げて、マンションまで帰った。

エレベーターに乗り込むと、急に二人きりになったようで、必要以上にドキドキしてしまう。

「あ、あのさ!」

耐え切れずに陶子は、話し出した。

「同期の女の子が結婚するんだけどさあ。向こうの母親が何かと口出してきて、大変なんだってー。結婚も楽じゃないよねえ」


何を言ってるんだ…私は…

もう少しマシな話題はないのかと反省しているとマキオは、優しい声で言った。

「いいね。そういう人間ぽい話、俺、好きだよ」

好きだよ、と言われて更にドキドキする。

「お互いのこと煩わしく思ったり、面倒だって思いながら、家族になってくんだろうなあ」

マキオは、若いのに随分と悟っているような言い方をした。

チン、とエレベーターが8階に到着し、二人で廊下に出た。
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