隣のマキオ
コンコン、と静かに隣の部屋をノックすると、すぐにかちゃりとドアが開いた。

「トーコちゃん、おそいよ、俺、腹減って先に食ってるよ」

そういいながらも、どーぞ、とスリッパを出してくれた。

男のひとり暮らしで、客用スリッパなんて普通は、ないだろう。

やはり、あの彼女と。

陶子が思いを巡らせていると、マキオが不意に言った。

「さっき。見てた?俺、喧嘩してたの」

「え?」

陶子は固まった。

「あそこのコンビニからだと丸見えだもんなー」

マキオは、少し頭を掻いた。

「あ、うん。ごめん。見るつもりは、なかったんだけど」

いやいや、めっちゃ見るつもりだったろ、と自分でツッコミを入れる。

「あれ、母親なんだよね」

「え?!お、お母さん?」

陶子は、また驚いて固まってしまった。

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