隣のマキオ
「…なに?」

陶子は、腕をさすった。

もう春なのに、なんだか肌寒い。


「同じ課の女の子から、ずっと好きだって言われててさ。

で、こないだの飲み会のあと、そういうことになっちゃって…」

浮気か…

陶子は、ショックだったが、こんなに素直に謝ってくれるなら、許してやってもいいか、と心で思った。

そのあとの言葉を聞くまでは。

「子供ができた。俺、結婚しようと思ってる」

. 「え…」


悟は、そういう男だった。

真面目すぎるくらい真面目で、優しくて、愛がいっぱいで…

悟は、また頭を下げた。

その姿を他人事のように見つめる陶子は、なんだか妙に冷静になってしまった。

「だよね、悟、おろせなんて絶対言わない人だよね…
だから、私も、子供できないようにすっごく気をつけてた」

「うん…俺、それは、絶対にできない」

悟は、まっすぐに陶子を見て「ごめん」とまた頭を下げた。
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