隣のマキオ
「わかった」

恨み言のひとつも言いたかったけれど、こんなに頭を下げている人間に対して、何も言えなかった。

「じゃあね」

陶子は、そのまま悟に背中を向けた。泣き顔を見られるのは辛かったから。

「元気でな」

悟の声を後頭部で受け止めて、陶子は、走って帰った。

そのまま。

二人は、終わってしまった。

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