隣のマキオ

時計を見ると、夜10時を回っている。

引っ越し先は、親友のアイコくらいにしかまだ話していない。

ドアスコープから見てみると、若い男が立っていた。

「どちらさまでしょうか?」

陶子は、恐る恐るインターフォンに応答した。


「隣の中野上です。なんかうちの荷物にそちらの荷物、まざってたみたいなんで」

「え!!」

陶子が慌ててドアを開けると、男は、「はい、コレ」とニッコリ笑って蓋の開いたダンボールを差し出した。

一番上には、部屋着が乗っていたが、下着類が全部入っている。

陶子は顔がみるみる赤くなるのがわかり、焦ってそれを受け取った。

「す、すいませんでした」

「いえいえ、こちらこそいいもん見せてもらいまして」

男は、ニヤニヤしながら、そう言って


「中野上マキオっていいます、よろしく」

と片手を差し出した。

陶子が、条件反射で手を出すと、マキオという男は、ぎゅーっと手を握りながら「あの下着からすると、もっと色っぽいお姉さんかなあと思った」と笑った。

「な、な、なんで見たの!?」

陶子は、手を離そうとしたがマキオは、なかなか離してくれない。

「そりゃあ、まあ、男の本能ってやつだな」


「離して!」

陶子は、手をふりほどくと、バタン!とドアを閉めた。

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