【完】『大器晩成』
そのあと四半年ばかり麟太郎は店に来なかった。
その間。
眞姫は千代崎のドームの近くで、買い物帰りにスカウトされたのである。
「ミナミで有名なナンバーワンのホステス」
という触れ込みで水着のグラビアを飾ると、たちまち問い合わせが来るようになって、そういった仕事もするようになり、ローカルの深夜のテレビの番組にも出るようになった。
やがて。
店になかなか顔を出せなくなって何週間か過ぎた頃、眞姫は麟太郎が大阪を離れた…という噂をママから聞いた。
「あの先生、大阪捨てはったんやわ」
こころよく思っていなかったママは悪し様に言ったが、
「ま、人には色々あるんやないですか」
眞姫はワイドショーのコメンテーターのような、毒にも薬にもならないような言い回しをして答えた。