【完】『大器晩成』

そんなきっかけで。

眞姫はあずにゃんこと饗庭梓と知り合って、電車移動で仕事場に行けるようになった頃には、店員と客という関係からすっかり仲の良い友人になっていた。

「東京に友達おらんかったから、あずにゃんがあのとき声かけてくれんかったらしんどかった」

眞姫が他日語った言葉である。

ともあれ。

休みが合うと眞姫と梓は、二人ともよく聴いていたバンドのライブに行ったり、梓の行き付けの横浜の居酒屋に行ったりと、ささやかな楽しみも見つけるようになっていた。

この頃になると。

眞姫も東京に慣れたようで、川崎から鶴見に移ってすぐに見つけた焼肉屋に梓を連れて行ったりもしている。

が。

関西弁だけは抜けないままで、

「そろそろ直した方が」

とマネージャーあたりには指摘されていたのだが、

「うーん、眞姫から関西弁引いたら、ただのグラビアタレントだよね」

という梓の一言で、いつの間にか立ち消えになったのであった。




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