【完】『大器晩成』
◇5◇
しばらくして。
「今度、ライブに出るから来て」
という梓の誘いで、眞姫は中野のビルの地下にあったライブハウスへと、行ったことがあった。
周りはライトを持った男たちだらけで、少しだけ眞姫は不安をおぼえたが、
「行くぞーっ!」
と登場した、可愛らしいミニスカートの衣装をつけた梓がメンバーと出てくると、ボルテージは最高潮になった。
「あずにゃーん!」
声があちこちから飛ぶ。
中でもセンターでサビを歌う梓は、このグループのエースのような立ち位置でもあるらしい。
「あずにゃん、あずにゃん!」
リズムに合わせて間の手のように掛け声がかかる。
眞姫はライブハウスの隅の席で遠慮がちながら、しかし梓がスポットライトを浴びて歌う姿を初めて見た。