【完】『大器晩成』

その帰り。

いわゆる打ち上げめいた小さな飲み会が開かれ、梓はそこに眞姫を誘った。

「うちみたいな部外者がえぇの?」

「大丈夫大丈夫、なんかあったら私がどうにかするから」

梓もそうした面は、眞姫に通じるところがあったらしい。

小さな居酒屋を貸し切って開かれた飲み会なだけに、音響や照明のスタッフなども交ざって、会は賑やかに始まった。

梓はセンターだけに最初はあちこちに挨拶回りをしていたが、隅で飲んでいる眞姫の席に来ると、

「お待たせ」

とグラスをちょんと当て、乾杯めいた仕種を見せた。

「あずにゃんって頑張り屋さんやね」

打ち上げまであんなに気を遣うなんて、と眞姫はアイドルが実は肉体労働者であることに内心で驚いていた。

梓はグラスのウーロン茶を飲み干すと、

「うちらアイドルは、とにかく上を目指して行くしかない仕事だからさ」

確かに。

テレビに出るようなアイドルは、ほんの一握りでしかない。

大多数は。

梓のように地道にライブやプロモーションをコツコツと続けている。

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