【完】『大器晩成』


それを。

梓の活動を見て知ると、ホステスという仕事のコミュニケーションの力を鍛える面に繋がっているように眞姫は感じたらしく、

「うちはミナミでホステスやったからアイドルってよぅ分からへんかったけど、アイドルって仕事は大変な業種なんやなって」

「そうでもないよ、だって他のメンバーなんかはうちのグループは大器晩成だから、頑張ればいつか売れるって思ってるとこがあるけど」

梓のもとに新しいウーロン茶のグラスが来た。

「私は大器晩成って言葉は嫌いなんだよね」

「…どうして?」

眞姫は不思議そうな顔をした。

「だって大器晩成ってことはさ、最後の最後まで運がめぐってこないってことでしょ?」

この発想は、眞姫にはないもので新鮮に感じられた。

「うちはそんなの嫌だな。アイドルでいられる時間は短いし、三十路近くなったらお笑いか脱ぐか辞めるかしか選択肢がないのが、うちらの世界だからさ」

梓には梓なりの焦りのようなものが見えていたらしい。



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