【完】『大器晩成』
少しグラビアの仕事が落ち着き始めた頃、
「眞姫ちゃんさぁ、リポーターの仕事って興味ある?」
と、事務所の女社長に切り出されたことがあった。
「リポーター、ですか?」
「そう。眞姫ちゃん割とポンポン物言うし、ホステスやってたから人と接するの嫌いじゃないでしょ?」
「まぁお客さんをあしらうのは得意でしたけどね」
眞姫は冗談めかして切り返した。
「実はね、セイラちゃんに生放送の仕事が急に決まって、リポーターのロケに誰か代わりを入れなきゃなんなくなって」
セイラとは事務所の先輩の貴島セイラというモデルのことを指す。
帰国子女のセイラはすらりとしたスタイルとアメリカ育ちらしい御侠なキャラクターで、このところバラエティに呼ばれることが増えていたのである。
「でね、セイラちゃんが、最近スキャンダルで謹慎してるタレントの代演で生放送決まっちゃって」
それで眞姫にロケの仕事が回ってきたらしい。
「先方には眞姫ちゃんが代わりに行きますって返事してあるから」
「それじゃ断れへんやないですか」
突っ込みが入った。
「ま、しゃあないです。やってみます」
そうしたいきさつで、引き受けることになったらしかった。