【完】『大器晩成』
◇7◇

ロケのタイムテーブルを見て、このときほど眞姫は驚いたことはなかった。

桜岡麟太郎の工房がロケ先なのである。

「やっぱり東京に来てたんや」

しかし。

ママが言っていた大阪を捨てたというのとは違うような気もしていた。

「確か北海道の方の生まれって話してたような」

根っからの難波っ子ではない。

むしろ。

心外な話であろう。

それは置く。

地図を見ると明らかに位置は都内ではない。

横浜からさらに離れた、横須賀の逸見の駅からさらに上がったあたりにあるのである。

「麟太郎さん、何でこんなとこに移ったんやろか」

疑問がわいてくるのも、不自然な流れではなかったようで、

「会ったら訊いてみたろかな」

眞姫は渡されたタイムテーブルをバッグにしまった。



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