【完】『大器晩成』
ロケ当日。
移動のロケバスの中で、眞姫の胸中にはさまざまなクエスチョンが浮かんでいた。
が。
周りのスタッフやマネージャーにそれは分からない。
「眞姫ちゃん、車酔いした?」
とマネージャーから薬を差し出されるほど、あんまりかんばしくない表情をしていたらしい。
都内の事務所から横須賀まで、距離はある。
その間。
少し仮眠を取った。
眞姫が仮眠から覚めると、すでに横浜の市街地は越えて、もうすぐ金沢文庫に差し掛かろうかというあたりである。
「マネージャーさん、メイクボックスあります?」
手鏡で化粧崩れを見たが、変わったところはない。
金沢文庫を抜けると、夏島の工場地を抜けた田浦の先が逸見であった。