【完】『大器晩成』
平尾の叔母の店はいわゆるスナックで、昼間からカラオケの演歌をがなる酒臭い年寄りやら、いつ働いてるのかよくわからない中年がたむろしていた。
昼も夜も酒を出したり、デュエットの相手をさせられたり、ときには尻を触られるぐらいのことはあって、はじめは涙目になっていた眞姫だが、
「おっちゃん触ったから一万円もらうで」
などと慣れてくると切り返せるようには、なっていたようである。
さすがに叔母も不憫には感じていたようで、一年ほど過ぎた頃に常連客の紹介で市岡の定時制の高校に通学するようになってからは、昼の店番だけを手伝わせた。