【完】『大器晩成』

眞姫はふと、

「でも、桜岡先生は関西にいたんですよね?」

遠距離やったんですか、と訊いた。

「最初はね」

セイラは続ける。

「だけど私があんまりにも恋愛体質で、仕事と私とどっち取るのって言ったら、あるとき横須賀に引っ越したよって連絡来て」

でもそのあとすぐ別れちゃったから、悪いことしたかなって…とセイラはばつの悪そうな表情をした。

「うーん…」

眞姫は答に窮した。

「当事者どうしでなきゃ分からないけどさ、麟太郎はそういうとこがある人だから、早く誰か好い人見つからないかなって思ってるんだ」

「よりは…戻せないですよね」

言いかけた眞姫は、現在のセイラに漫画家の彼氏がいることを思い出した。

「麟太郎とは無理かな。でも、悪い人じゃないってことだけは、私が保証する」

眞姫に勧めているような、そうでないような、何とも判然としない言い方をして、この場はセイラと別れた。


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