【完】『大器晩成』
そうやって。
およそ一年ほどが過ぎた頃、
「厚みが等しくなって、歪まなくなったな」
と麟太郎が見て言うと、
「ここからは、僕が教えることはなくなった」
よく辛抱したね、と麟太郎は言ってから、
「ちょっと来なさい」
と、眞姫をいきなり銀行に連れて行き、融資の窓口に向かわせたところで、
「銀行からのお金の借り方を知らないだろう」
と言った。
すると。
趣味で窯場の陶芸教室に来るという行員を紹介し、
「これで窯が開ける手前まで来た。あとはあなた次第だから精進しなさい」
と融資の話をまとめた上で、
「あとはあなたが努力するだけですよ」
と言い、晴れて一人前になったのを見届けた。
開窯を見届けると、
「何かあったら相談に来なさい」
とだけ麟太郎は言った。