【完】『大器晩成』

そうした納品が落ち着いた頃、

「久しぶり」

と引き戸を開けたのは、梓である。

こまめに連絡は取っていたが、互いに会うのは半年以上ぶりであった。

「すごいね、眞姫」

「ありがとー」

でも、と眞姫は、

「あずにゃんだって今じゃ売れてんじゃん」

この頃の梓はというと。

河原で撮影して動画にアップしたダンスの映像で、偶然に黄色の新幹線が映り込むという奇跡的な出来事があった。

それが切っ掛けで。

ネットニュースで話題となり、アメリカのアーティストのワールドツアーに帯同するという好機を得たのである。

「今じゃ世界のあずにゃんだもんなぁ」

眞姫は遠い目をした。

「けどさ、眞姫が陶芸家になったって聞いたときは、みんなビックリしたんだよ」

「そうかな?」

あれはあずにゃんが言ったことが一番の転機やった、と眞姫は、梓が語っていた例の話をした。



< 38 / 52 >

この作品をシェア

pagetop